「損益計算書と貸借対照表は、どっちが重要なのだろう?」

「損益計算書と貸借対照表は、何が違うのだろう?」


 

このようにお悩みではないでしょうか。


 

損益計算書と貸借対照表の全体像を知っていても、どっちが重要で何が違うかを具体的に知らない方も多いことでしょう。




そこで本記事では、損益計算書と貸借対照表の重要性や違い、覚え方を解説していきます。



 

さらに損益計算書と貸借対照表の関係性についても解説しますので、ぜひ最後までお読みください。


 

損益計算書と貸借対照表の基本概念

 

ここでは、損益計算書と貸借対照表の基本概念を解説していきます。


 

解説するのは、下記の2つです。


損益計算書と貸借対照表の役割と目的

損益計算書と貸借対照表の作成タイミング


 

それぞれの違いを理解するためにも、基本概念からしっかりと確認していきましょう。


 

損益計算書と貸借対照表の役割と目的

 

損益計算書と貸借対照表の役割と、作成される目的は下記の通りです。

 

 

役割

目的

損益計算書

経営成績を見える化する

ある一定の期間で会社がどれだけの利益を上げたかを把握するため

貸借対照表

資金の調達方法や運用方法を見える化する

ある時点の資産や負債の状況を把握するため

 

損益計算書は、経営成績を見える化する役割を持っています。


 

ある一定の期間内で、会社の売上や費用の金額を把握し、どれだけの利益を上げたかを把握できるのが損益計算書です。


 

今期実績と過年度実績の損益計算書を比較することで、売上や費用のどの項目を改善すれば良いかを分析できるため、今後の経営活動に活かせます。


 

また、損益計算書は英語で「Profit and Loss statement」と表されるため、頭文字を取ってP/L(ピーエル)」と略されることが多いことを覚えておきましょう。


 

一方、貸借対照表は、資金の調達方法や運用方法を見える化する役割を持っています。



ある時点における、現金などの資産や借入金などの負債の状況がどうなっているかを把握できるのが貸借対照表です。


 

貸借対照表も損益計算書と同様に、過年度の実績と比べて分析することで、経営活動に活かせます。


 

なお貸借対照表は英語では「Balance Sheet」と呼ばれるため、頭文字を取ってB/S(ビーエス)」と略されることを覚えておいてください。


 

損益計算書と貸借対照表の作成タイミング

 

一般的な作成タイミングは、四半期ごとや半期ごとの各決算期の期末時点です。


 

基本的には、各決算期の事業活動が終了後に作成することになります。


 

ただし会社によっては、経営成績や資産・負債の状況を確認するために、月次決算のタイミングで作成することがあることも覚えておきましょう。



貸借対照表|決算日の時点での財政状態を表す書類

 

 

貸借対照表は、決算日の時点で資産や負債などの財政状態がどうなっているのかを表す計算書類です。


 

保有資産のリストを確認できる計算書類ともいえます。


 

また損益計算書との違いを理解するために、貸借対照表は「ある時点」の状態を表す書類ということも覚えておくと良いでしょう。

 

 

貸借対照表を見る際の4つのポイント

 

貸借対照表は、ただ数字を見ているだけでは理解するのが難しい計算書類です。


 

そこでここでは、貸借対照表を見る際に確認すべき4つのポイントを解説していきます。


 

具体的には、下記の4つです。

 

  1. ・過年度実績と比較する
  2. ・自己資本が十分にあるかどうか
  3. ・売掛金と棚卸資産が適正かどうか
  4. ・利益剰余金がプラスか

 

1つずつ解説しますので、ポイントをおさえながら貸借対照表の分析を進めていきましょう。



過年度実績と比較する

 

まずは過年度実績と比較することが大事です。


 

明らかな異常値があれば、決算の間違いである可能性もあります。


 

過年度と比べて、大きな差異がある項目については要因をおさえておきましょう。


 

自己資本が十分にあるかどうか

 

自己資本は返済義務がないお金のため、大きければ会社の財政状況が健全であることが分かります。


 

自己資本比率(%)は純資産÷資産×100で算出でき、20%以上あれば一般的な水準と言われています。


 

貸借対照表を分析する練習として、自分の会社がどれくらいの自己資本比率なのかを確認してみると良いでしょう。


 

売掛金と棚卸資産が適正かどうか

 

売掛金は、販売した商品やサービスの代金を後払いで回収する権利のことです。


 

売掛金が大きすぎる場合、代金が入金されていないことを意味しているため、売掛金の金額が適正かどうかを確認する必要があります。


 

棚卸資産は、商品や仕掛品などのこれから販売される在庫のことです。


 

在庫が増えて滞留期間が長くなると、在庫の品質低下を招き、不良在庫になる恐れがあるため、棚卸資産が大きすぎないかを見るのもポイントの一つです。


 

利益剰余金がプラスか

 

利益剰余金は、これまで会社が積み立てた利益のことを指すため、マイナスの場合は赤字で経営していることになります。


 

利益剰余金がプラスになっているかを確認することで、経営状態の良し悪しを確認すると良いでしょう。


 

損益計算書|会社の収益力を把握するための書類

 

損益計算書は、ある期間において、会社がどれくらいの収益が上がったかを把握するための計算書類です。


 

会社を経営していて、いくらの儲けが出たかが分かる書類のため、会社の成績表ともいえます。


 

したがって、損益計算書は「ある期間」での収益力を把握する書類のため、「ある時点」の財政状態を表す貸借対照表とは、見方が異なることを覚えておくと良いでしょう。



損益計算書を見る際の4つのポイント

 

損益計算書も貸借対照表と同様に、ポイントをおさえながら分析をしないと理解するのが難しい計算書類です。


 

損益計算書を見る上で、確認すべきポイントは下記の4つです。

 

  1. ・過年度実績と比較する
  2. ・営業利益はどれくらいか
  3. ・当期純利益がどれくらい残ったか
  4. ・経費が適正に使われているか


それぞれ解説するので、損益計算書を分析する際に確認してみてください。

 

過年度実績と比較する


損益計算書でも、過年度実績と比較することが大切です。


 

例えば前年と比べて売上が下がってしまった場合、売上減の要因を突き止めることで、今後どのような手をうっていくのかを検討できます。


 

今後の改善策を考える上で、過年度実績と比較するのが良いでしょう。


 

営業利益はどれくらいか

 

損益計算書における利益は、売上総利益・営業利益・経常利益・税引前当期純利益・当期純利益の5つの利益があります。


 

5つの利益のうち、営業利益は本業でどれだけの儲けが出たかを確認できる利益のため、まずは営業利益がどれくらいかを確認しましょう。


 

もし営業利益が赤字、いわゆる営業損失のときは、赤字を出してしまった要因を分析する必要があります。


 

本業でどれだけ稼いでいるかを見るためにも、まずは重点的に営業利益がどれくらいかを確認すると良いでしょう。


 

当期純利益がどれくらい残ったか

 

当期純利益は5つの利益のうち、最終的に会社に残る利益です。


 

営業利益時点では黒字でも、営業外損失や特別損失が計上されて、当期純利益が赤字になってしまうケースも考えられます。


 

したがって、当期純利益がどれくらい残ったかを把握するのが大切です。


 

経費が適正に使われているか

 

過年度の実績や社内予算などと比較して、経費が適正に使われているかを確認しましょう。


 

特に売上が変動しても一定の金額でかかる、固定費を確認するのが大切です。


 

なぜなら固定費は売上の増減に影響しないため、固定費を管理すれば利益が出やすい収益構造になるからです。


 

スタッフの人件費やオフィスの家賃などの固定費が、適正に使われているかを確認しましょう。


 

損益計算書と貸借対照表の違いと覚え方

 

損益計算書と貸借対照表には、主に下記の3つの違いがあります。

 

  1. ・表の形式の違い
  2. ・内容の違い
  3. ・作成の目的の違い

 

それぞれの違いの項目ごとに覚え方も解説するので、違いが分からない方は参考にしてください。



 

損益計算書と貸借対照表の形式の違い


1つ目は表の形式の違いです。

 

損益計算書の表の形式は一番上に売上があり、次に売上原価、売上総利益と順番に記載され、最後は当期純利益となります。


 

損益計算書は上から下へ流れていくため、縦に記載される構成となります。



一方、貸借対照表は、左に資産、右に負債と純資産があるため、左右に配置された形式です。


 

そこで覚え方は、縦に長いのが損益計算書左右に開いているのが貸借対照表と覚えておくと良いでしょう。


 

損益計算書と貸借対照表の内容の違い


 

2つ目は内容の違いです。

 

内容の違いをまとめると、下記の通りとなります。


損益計算書:収益、費用

貸借対照表:資産・負債・純資産

 

損益計算書には、売上や営業利益などの収益と、人件費や消耗品費などの費用の金額が記載されています。

 

貸借対照表は、左側に売掛金などの資産、右側に借入金などの負債、資本金などの純資産が記載され、左側の金額と右側の金額が一致するのが特徴です。

 

また、左側は現在のお金の状態、右側がお金の調達方法を表していることも覚えておいてください。

 

したがって、内容で覚えるなら儲けを計算しているのが損益計算書で、そうではない方が貸借対照表、と理解すると覚えやすいでしょう。


 

損益計算書と貸借対照表の作成の目的の違い

 

3つ目は、作成の目的の違いです。

 

損益計算書は、ある「期間」でどれだけの利益が上がったかを、把握するために作られます。

 

対して貸借対照表は、ある「時点」の資産や負債などの財政状態を把握するために作られます。

 

したがって、「期間」で把握するのが損益計算書「時点」で把握するのが貸借対照表、と覚えておくと良いでしょう。


 

貸借対照表と損益計算書の関係性とつながり

 

貸借対照表と損益計算書は異なる計算書類ですが、関係性はあるのでしょうか?


 

そこでここでは、貸借対照表と損益計算書の関係性とつながりを解説していきます。


 

貸借対照表の"純資産"=損益計算書の"当期純利益"の積み上げ

 

貸借対照表の純資産の一部は、毎期計上される損益計算書の当期純利益が積みあがっていくため、関係性とつながりがあるといえます。


 

貸借対照表と損益計算書がつながる部分は、純資産と当期純利益だけのため覚えておきましょう。


 

「利益剰余金」の勘定科目で計上

 

損益計算書の当期純利益が計上されるのは、貸借対照表の純資産の中にある「利益剰余金」という勘定科目です。


 

利益剰余金は、会社の活動によって生み出した利益を、会社内部に積み立てたお金のことで、内部留保とも呼ばれます。


 

利益剰余金、つまり内部留保は、資金繰りに困ったときや投資をしたいときに使用できるため、会社を経営するうえで必要なものです。


 

貸借対照表に当期純利益が計上される流れ

 

1年の会社の活動が終了し、決算処理をして損益計算書を作成することで、当期純利益を確定させます。


 

当期純利益のうち、株主などへ配当を行って残った利益が「当期末処分利益」です


 

その後、当期末処分利益は、貸借対照表の純資産の中にある「利益剰余金」として計上されます。


 

このように、損益計算書の当期純利益と貸借対照表の純資産はつながっています。


 

それぞれ完全に独立した計算書類と考えていた方は、つながりがあることを覚えておくと良いでしょう。


 

2つの指標でみる貸借対照表と損益計算書の関係性とつながり

 

前の章では、貸借対照表と損益計算書のつながりについて解説しましたが、下記の2つの指標を使ってもつながりを確認できます。


ROE(自己資本利益率)

ROA(総資産利益率)


 

それぞれの指標について解説していきます。


 

ROE(自己資本利益率)

 

ROEとは「Return On Equity」の頭文字を取った略語で、自己資本利益率をあらわす指標です。


 

計算式は下記の通りです。

 

ROE(%)=当期純利益÷純資産×100


 

ROEの指標を使うことで、株主が出資したお金などの投下した資本を元手にして、会社がどれだけ効率的に利益を上げているかが分かります。


 

例えば純資産が10億円で、1億円の利益を上げた場合のROEはいくつでしょうか?


 

当期純利益(1億円)÷純資産(10億円)×100の計算式から、ROE10%となります。


 

業種により異なりますが、一般的にはROE10%を上回ると優良企業といわれています。


 

ROEは、投資家が投資をする判断に使われることが多い重要な指標のため、覚えておきましょう。


 

ROA(総資産利益率)

 

ROAは「Return On Assets」の略語で、総資産利益率のことです。


 

計算式は下記の通りです。

 

ROA(%)=当期純利益÷総資産×100


 

ROAの指標を使うと、会社が総資産を活用して、どれだけ効率的に利益を上げているかが分かります。


 

例えば、総資産が20億円で1億円の利益を上げた場合、ROAがいくつになるかを考えてみましょう。


 

当期純利益(1億円)÷総資産(20億円)×100の計算式から、ROA5%となります。


 

業種により異なる条件付きですが、ROA5%を上回ると優良企業とされています。


 

なお総資産は、負債+純資産の合計と同金額のため、下記の計算式でも表現できることを覚えておきましょう。


 

ROA(%)=当期純利益÷(負債+純資産)×100


 

今回はROEROAを解説しましたが、どちらも重要な指標です。


 

会社の経営分析においては、ROEROAの両方の指標を活用することが大切です。


 

まとめ|損益計算書と貸借対照表はどっちも重要

 

本記事では、損益計算書と貸借対照表ではどっちが重要なのか、また違いや覚え方を解説しました。

 

結論としては、損益計算書と貸借対照表はどっちも重要で、両方とも会社の経営分析には欠かせない計算書類です。

 

役割と目的は下記の通りなので、確認しておきましょう。

 

 

役割

目的

損益計算書

経営成績を見える化する

ある一定の期間で会社がどれだけの利益を上げたかを把握するため

貸借対照表

資金の調達方法や運用方法を見える化する

ある時点の資産や負債の状況を把握するため

 

損益計算書と貸借対照表の違いは、下記の3つです。

 

  1. ・表の形式の違い
  2. ・内容の違い
  3. ・作成の目的の違い

 

覚え方のうち「儲けを計算しているのが損益計算書で、そうではない方が貸借対照表」と覚えるのが一番簡単なので、覚えられない方は参考にしてください。

 

それから損益計算書の当期純利益と、貸借対照表の純資産はつながっています。

 

それぞれ完全に独立したものと考えている方は、つながりがあることを覚えておいてください。

 

また損益計算書と貸借対照表の関係性を活用した指標である、ROE(自己資本利益率)とROA(総資産利益率)についても解説しました。

 

どちらも重要な指標のため、経営分析で使えるように覚えておきましょう。

 


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